「何してるの?」
「土井氏は愚かな質問をしますね。葉句露たちがプールで泳いでいるように見えますか?」
そう言って何気ない質問にも辛辣に返す眼鏡の彼女は葉句露という名前で、もう一人の髪を後ろで結んだ方は小雪というらしい。
水泳が嫌でここでサボっているというのは分かるが、なぜ水着でいるのか彼が訊くと
「授業の始めと終わりにさりげなく混ざるために決まってますよね?2秒で出る結論ですよね?――」
と、何か質問すれば辛辣に返すのが葉句露のデフォルトなようだ。
小雪が悪い子じゃないとフォローすれば、それにも「良い悪いで葉句露を論じないでもらえます?」と友達にも絡んだ。
それを小雪が軽くいなすのも、いつものことのようだった。
葉句露は人文科学系が好きで、小雪は小説が好きだった。
すると葉句露は作り事の話を読む小雪の気が知れない破滅主義者だとこきおろし、彼にも同意を求めてきた。
彼が答えに窮すると、小雪がスッと立ち上がり「私はね芸術が好きなの」と言いながら逆立ちをして足を大きく広げ、身体の柔らかさを披露した。
「新体操部やってるんだ。今度練習見に来てよ」
「う、うん」
彼は小雪の股間をチラチラ見ながら答えた。
お昼になると、今日の土井当番の東堂にあ~んをしてもらいながら弁当を食べ始めた。
かつては嫌な思い出しかない屋上だったが、今はこうして美少女たちと一緒に楽しくご飯をたべられることに幸せを感じ、外に出れないことをあまり気にしなくなっていた。
柊が寮の裏にある雑木林に幽霊が出るらしいと話し始めると、「やめてよ、私いつもその辺ランニングしてるのに」と東堂が少し怖がった。
それにちふゆが「なんだ貴様、幽霊などという非科学的なものが怖いのか?図体はでかいくせに子供だな」とここぞとばかりに嫌味を言うと、東堂も負けずに「子供のあんたに言われたら私もおしまいね」と冷静に言い返した。
その時、カレンが肝試しをしようと言い出した。
土井と女の子がペアを組んで敷地内を一周するものだというと、すぐに東堂たちがペアの相手に立候補してきたが、もう相手は決まっているとカレンは答え、彼女たちに謝った。