終末のハーレム2巻14話
【新生活】

とある高校の更衣室の中。

 

「男性用」というものがなくなって久しいこの世界で、女生徒たちはある噂にはしゃいでいた。

 

 

「さっき職員前通った時に聞いたんだけど、明日らしいよ」

「えっ来るの!!」

「ヤバイっ緊張してきた」

「私だったらどうしよう~」

「ははは、ないない」

「あ~ひどーい」
終末のハーレム

 

目覚めたばかりのナンバー3、土井翔太の噂で持ち切りだった。

 

土井はカレンが用意した特別な高校で、高校生をもう一度やり直すことになる。

 

そして、そんなことをする目的はもちろん、土井にストレスなくメイティングをしてもらいたいからだったが、彼はそんな理由があろうとは知る由もなく、自分以外は女子しかいない学校生活を始めるしか選択肢を与えられていなかった。

 

 

カレンは土井を寮の部屋に案内した。

元々は二人部屋だったらしくベッドは二つ用意されている。そのおかげでなかなかの広さがあった。

 

「ここが翔太様のお部屋です」
終末のハーレム

 

様付けがこそばゆい彼はやめてくれるよう頼むが、失礼があったら私が怒られちゃいますからダメですと、取り合ってくれなかった。

 

部屋に着くなり、彼の荷物を備え付けの家具に整理し始めるカレン。

 

身の回りの世話は完全にやってあげるつもりらしく、彼が手を出す隙がなかった。

 

 

土井はいそいそと立ち働くカレンに、改めて質問してみた。

 

「UWでしたっけ?世界を統治してる組織」

「そうでーす!カレンはそこから派遣された翔太様のお世話係です!」
終末のハーレム

 

一度説明してもらった内容をもう一度訊いて、土井は改めて今の世界の状況を整理していく。

 

本当にカレンの言う通り、世界中の男が死滅しかけているなら、自分はとんでもなく貴重な存在になるのは分かったが、何も実感できていないので信じるのは難しかった。

 

それに、おそらく同年代のカレンを派遣したのは、警戒心を与えないため・・・

と、冷静に考えを巡らせる土井。

 

手始めにカレンに年齢を訊いてみるが、それはあっさりはぐらかされてしまう。

しかし

「これからは一緒のクラスですよ、キャッ」

とおどけて見せるので、その言葉通りの年齢だとしたら、実際は5歳下ということになる。
終末のハーレム

 

だが、果たして5年も冷却保存されていた自分はそのまま23歳になったと言えるのか、彼自身も答えが出せないでいた。

 

 

この世界の状況を聞いてからずっと疑問だったのは、自分以外に生きている男はいないのか?ということだった。

それも改めて訊くと、コールドスリープについている人はたくさんいて、その中に父もいると教えてくれ、そのうち会わせてくれるとも言ってくれた。

 

でも土井は、父に関してはそこまで気にしていなかった。

 

その流れでアメリカにいる妹と母について訊ねると、国家間の情勢が不安定なせいで、暗に行方は分からないと匂わされてしまった。
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そんな事情で、行動範囲はこの寮と学校だけだと言われる。

 

「不便があれば、このお世話係になんなりと」
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常に変わらない明るさで言ってくれるが、まだ色々と慣れるには時間がかかりそうだった。

 

 

カレンと共に、新しい教室の前まで来た。

 

感じたことのないドキドキを感じながら、ドアが勢いよく開かれた。

 

その瞬間、教室の中にいた全員が一斉に土井のに注目した。
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確かにカレンに説明された通り、目覚めてからここまで、そしてこの教室にも、男を一人も見ていなかった。

 

 

コールドスリープに着く前も黒板の前で挨拶しようとしたが、その時は誰も見ていなかった。

しかし今は、全員から興味深そうに見られている。

 

「ど・・・土井・・・翔太・・・です・・・。よろしく・・・お願いします」

 

少し以上にマシになった世界だが、真っ直ぐ前を見ることは難しかった。
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