部屋に戻る途中、
「よう、ナンバー2」と声をかけられた。
「俺は火野恭司。キミの先輩・・・ってことになんのかな?」
「初めまして、水原怜人です」
これが、MKウイルスの免疫を持つ男性同士の初めての出会いだった。
火野はあまり人見知りはしない明るいタイプのようで、怜人もいい人そうだと安心感を覚えた。
その直後、肩を組まれながら「メイティングしてないんだって?」と訊いてきた。
怜人が理由を話そうとするのを遮り、火野は一人合点して、同じ境遇の彼の心中を勝手に思い描いて話し始めた。
「こんなうまい話あるのか?壮大なドッキリなんじゃないのか?実は恐ろしい生体実験なんじゃないのか?・・・ってね」
そして一拍溜めて
「だが!これは紛れもなく現実!この世の楽園だ!」と言い切った。
感じ方の違いに怜人は苦笑いを漏らすが、火野は相手の反応など気にしないようで、
「モデル、アイドル、今日は女優だ!俺は子作りに励むぜー!」と一方的に言いたいことだけ言って去っていった。
シャワーを浴びながら、火野の言葉を思い返す。
「楽しめ」
ここに絵理沙がいたら、確かに楽しめるだろうな。
だから探しに行かないとな。
そう決意を固めた。
その直後、急に電気が消えた。
「停電?故障か?ドアは・・・」
伸ばした手に触れたのは、妙に柔らかい感触だった、
「なーんだ。聞いてたより、随分積極的じゃない」
その声の正体は、いつの間にかシャワールームに入って来ていた美来に勝るとも劣らない巨乳の女性で、なぜか酒瓶を持っていた。
「あんたがナンバー2ね?」
「な・・・なんですかあなたは?」
しかし女は怜人の質問に答えずに出口に立ち塞がり、ドアノブを叩き壊してしまった。
「ざーんねん。これでもう出られないわね」
そう言いながら、絵理沙への操を試すかのように豊満な身体を押し付けてきた。
考察・感想
ハーレム生活を心から楽しんでいる火野が初登場。
今までの世界ならヤリチン野郎と言われるところだが、終末の世界では男としての役目を立派に果たす救世主兼功労者だ。
ここで一つ注目したいのが、まひるが「男ってみんなこうなの!?」と言った時に、美来が一瞬手をとめたこと。
これが残されたデザートに気付いたからだとは思えない。過去に男関係で苦い思い出があるのか、怜人が強い意思で自分を拒絶したからなのかは分からない。
ただ、後にでてくる片桐麗亜とも何か関係がありそうな気がする。