終末のハーレム1巻3話
【50億】

「怜人様をお慰めするために参りました」
終末のハーレム

 

 

そう言って迫れば、拒む男などいない。

 

それが間違いないと思っているかのように、美来は彼が「待って」と言うのに耳を貸さず、強引にキスをして、まだ僅かに残る理性を吹き飛ばそうとする。
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怜人も柔らかい身体を押し付けられ、甘いキスをされて、我慢の限界を迎えようとしていた。

 

「ドッドッドッ」
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鼓動が早くなって、美来の腰に手を回そうとした直後、彼女に絵理沙が重なって見えた。
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それで理性を取り戻した怜人。

 

「ダメだ!」

彼女の肩を掴んで引き剥がし、強く拒否の意思を示した。

 

美来は服を着ながら「私のことはお嫌いですか?」と、少し悲しげに訊いた。

 

「そんなことはないです・・・でも、たくさんの人が死んだり昏睡状態になっている中で、自分だけそういう気分になれません」

 

怜人は絵理沙と重なって見えたことは伏せ、そうごまかした。

 

美来はただ「失礼しました」とだけ言って、部屋を出ていった。
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残された彼は、溜息をつくしかできなかった。

 

 

美来が出てくるのを待ち構えていたかのように、ナンバー1の担当官、石動寧々子が立っていた。

 

「失敗したみたいね。ふふっ」

バカにしたような笑いに、美来はキッと睨み返して「何か?」と問うた。
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寧々子は「あなたけっこう可愛いのに、意気地のない男の相手をするのは可哀想だと思って」

 

美来は再び「どういう意味でしょう?」と訊く。

 

それには「私の担当、火野様に種付けしてもらったら?今なら特別に順番を優先してあげるけど?」

 

そこでまたバカにしたような笑みを零す寧々子に対し、美来は

「私は水原様の担当官です」と言い切り、相手を怯ませて追い返した。
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美来を拒絶した怜人は、眠ることもできずに今の状況を恨み始めていた。

 

どうにかして絵理沙と連絡が取りたい。

そう思った時、スリープ直前にネックレスを預けた事を思い出した。
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すぐに携帯で確かめてみると、予想通り反応を示してくれた。

 

 

翌日になって、さっそく反応を頼りに出かける準備をしているところに、美来がやってきた。

 

「おはようございます。画像だけでは実感が湧き辛いようなので、今日は特別な場所にお連れします」と、一方的に告げ、彼も戸惑いながらついて行った。

 

また子作り関係のことだろうと思い「あの、何度も言ってますが俺は・・・」と先に断ろうとした時、美来は大きなガラスの前にあるボタンを押した。

すると、向こう側が透けて見え、しかもそこは女風呂でたくさんの女性が入浴していた。
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「ここにいる女性、誰でも部屋にお連れします。皆、あなたと子作りしてもいいと考え、嫌々ここにいるものはおりません」

 

いきなり裸の女性を目の前にして顔を赤くしながらも、「どうしてそんなことが分かるんですか?」と抵抗する。

 

「ウイルスの免疫を持つ5人のプロフィールデータを他の大勢の男性のデータと混ぜて、この中から子作りしてもいいと思える男性がいるかどうかアンケートを取ったのです。そして水原様は大変多くの女性から選ばれました」
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と、今の状況では複雑な事実を教えてくれた。

 

さらに「ここにいるのは一部に過ぎません。なにせ、世界には5人の男性に対して50億の女性がいるのですから」

そんな絶望的な数字を、殺し文句のように美来は使った。
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何も言えないでいる彼に顔を寄せ、いっそのこと全員でもいい。

もしこの中にタイプがいなければお好みの女性を探します。

100人でも、10000人でも。

 

そこまで言われると、さすがに想像せずにはいられなかった。

 

自分を求める数え切れないほどの女性が、物欲しそうな顔でこっちを見つめている。

自分はそれを自由に選べる立場にいるのだ。
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