終末のハーレム23話
【健康診断】
「あんたも懲りないね。何度来ても同じだよ」
「お願いします!ご主人が亡くなる前にどこで何をしていたか教えてくれるだけでいいんです。
日本で最初の感染者であるご主人の行動が分かれば、
MKウイルスの発生元が分かるかもしれないんです」
怜人は再び谷口を訪ねて説き伏せようとする。
しかし、彼女は矛先を怜人に変えて頑なに話そうとはしなかい。
「ワクチン作りなんてやめて、子作りに励んでりゃいいだろ?
唯一活動可能である男のあんたが一番やるべきことは、子供をたくさん作ることだ。
ぞろぞろ連れてるその姉ちゃんたちとよろしくやってるんだろ?」
痛い所を突かれて何も言えなくなってしまう怜人。
口篭っている彼の代わりに、麗亜が説明した。
「水原氏はコールドスリープから目覚めてから一度もメイティング・・・
女性と生殖行為はしていません」
谷口は黙ってしまった。
彼をじっと見つめて
「お前さん、どっか悪いんじゃないのかい?」
と、胡散臭そうな目を向けて言い放った。
怜人は否定しようとするが、谷口はこれをいい機会だと思い、今から健康診断を受けてもらう代わりに、もし数値が自分より良かったなら、夫のことを話してやると提案した。
断る理由もなく、自信を持って彼は受け入れた。
しかし、メディカルスタッフは皆当然のようにミニスカートで、彼にチラチラと特別な視線を投げかけてくる。
マリアは谷口の真意が読めず
「一体どういうつもり?」
と単刀直入に訊くと
「あんたら、あいつに子作りさせたいんだろ?手伝ってやるよ」
そう言って、ニヤリと笑った。
その頃彼は、視力を検査していた。
順調に「上、右、下」とスラスラ答えていると、急にスタッフの女性が胸を見せてきた。
「なにやってるんですか!?」
「分からないんですか?・・・視力0.1っと」
スタッフたちの誘惑を退けながらまともな数値を叩き出せないと、谷口との勝負に勝つことはできなかった。
呼吸機能検査の時には、隣で「ぬぽぬぽ」と音を立てながら、女性が集中を乱してきた。
胸部X線の時には、不必要に胸を押し付けて説明してきた。
尿検査でやっと落ち着いてできると思ったが、満を持して朱音が手伝いにやってきて、その後の頭部MRIでも当然のように誘惑しにきた。
怜人の結果は散々だった。
病室に戻って谷口に診断結果を見せると、改めて読み上げられた。
「視覚障害。心電図異常波形。脳波異常。
やっぱりアンタ、身体がへんなんじゃないのかい?」
そう言われると分かっていたが、これはどうしようもなかった。
谷口もこの結果は予想通りだったので、一旦置いておいてから話し始めた。
普通の男なら、この状況で女とヤリまくらない訳がない。
他にやることがあろうが、いくらでも両立できるはずだ。
それに怜人は、研究をしながら女の子と楽しくヤッて、それで好きな子を待てるほど器用じゃないんです、と答えた。
すると谷口は
「あんた、ゲイなんじゃないのかい?」
と、ストレートに訊いた。
彼はそんな風に思われるとは思わず驚いたが、
「そういうわけじゃないんです・・・正直、ヤリたいなって気持ちもありますから。
けど、俺・・・好きな子がいるんです。
その分、MKウイルスに対抗できる方法を見つけられればチャラかなって思ってます」
その答えを聞いた谷口は、背中を向けて布団に潜り込み
「話は終わりだよ」
と言った。
彼らが帰って静かになると、谷口は不意に夫と二人で写っているツーショット写真に目を向けた。
夫の浮気を疑い、物を投げて怒鳴り散らした時、
「誤解じゃ。わしが惚れとるのはばあさんだけじゃ」
と、弱りきった笑顔で答えた夫の姿と怜人が、どこか重なって見えた。
怜人は翠に護衛を頼んで、露天風呂に浸かっていた。
「あんまり長湯しないで下さいね。バレたら私が麗亜さんに叱られちゃいますから」
「大丈夫だって!ここには誰もいないし」
「も~、どうなっても知りませんからねっ!」
無理を言ってお願いを聞いてもらったが、やはり一人でゆっくり露天風呂に入ると、諸々の疲れが一気に解きほぐされていく気がした。
とにかく、どうにかして谷口に心を開いてもらわなければならない。
そんなことを考えていると、女性が入ってくる声が聴こえて、慌ててサウナの方に逃げ込んだ。
入ってきた二人組の女性は、この時間帯を狙って入りにきたようだった。
翠が駆け寄って使用中だと説明しようとするが
「きゃー、この子可愛い~!」
「キミ一人?ママはどうしたの?」
と、見た目通りに子供扱いされてしまうのだった。
仕方なく蒸し暑いサウナの中で出て行ってくれるまで待つ事にした。
腰を下ろして溜息をついた直後、巨乳で金髪の外国人が浴衣を着たまま入ってきた。
「Oh-」
「あ・・・あのー」
彼が何か言おうとする前に、女性は彼の隣に腰を下ろして、ゆっくりサウナを楽しむ体勢に入ってしまった。
彼は何か事が起きる前に、平静を装って外に出ようとすると
「今出て行ったら叫びますことよ」
と、しっかり日本語で脅されてしまう。
振り返った彼に、有無を言わさぬ笑顔を向けながら
「お騒ぎにしたくないなら、そちら座ってくださいまし」
と、正面の席を指定される。
仕方なく腰を下ろし
「なんて浴衣着たままなんですか?」
と、穏やかに世間話を振ると
「わたくし留学生で、日本が好きでらっしゃいますから」
と、間違った知識と日本語で楽しそうに答えてくれる。
するといきなり
「さて、これからゲームをなさりましょう」
と、言い出した。
私に限界が来て先にこのサウナを出て行ったら、あなたのことは黙っていましょう。
あなたが先に出たら、私の言うことを何でも一つ聞いていただきますことよ、水原怜人さん。
知られているだろうことは覚悟していたが、彼女は今度は浴衣を脱ぎ始めた。
「我慢くらべでございます」
そう言う彼女の浴衣の下は、一糸纏わぬ裸だった。
驚く怜人をよそに
「暑いでございますね」
と、淡々と言ってのける彼女。
彼も男代表として、我慢比べに負けるわけにはいかなかった。
考察・感想
学生の旅行客が来ているとなれば、土井の学校が修学旅行にでも来ていると勘繰ってしまうが、彼の存在はトップシークレットなので、一般人に見られる恐れがある場所への外出はできないだろう。
留学生のクロエが、海外から派遣されたスパイの可能性は十二分にある。
世界宣言で世界中に存在を知られた怜人を、どうにか本国に連れ去ろうとしているのかも知れない。
もしくは、怜人を求めてきただけの留学生なのかも。
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