終末のハーレム2巻9話
【格差】

MKウイルスは人が作り出したもの!?

 

まさかの答えに、怜人は言葉を失ってしまった。
終末のハーレム

 

 

「怜人・・・この世界は欺瞞に包まれてる。

ウイルスに関する重要な情報を手に入れたけど、誰も信用できない・・・

会いたい・・・怜人に会いたいよ!」

 

そう涙の叫びで映像を締め括られた。

 

そこにいるはずのない絵理沙に向かって彼は手を伸ばした。
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会いたいのは、彼も同じだった。

 

 

その時、まひるの声で

「あっ周防さん。お兄ちゃんならトイレです」

と聴こえてきた。

 

平静を装って部屋に戻ると、美来はじっと怜人を見つめてきた。

 

もしかして監視されていたのかと彼は疑う。
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監視されていたのかどうかは分からないが、徹夜したせいで顔色が悪いのに気付かれていただけのようだった。

 

それと用件は、彼が申請していた実験施設の使用許可が下りそうだと伝えに来てくれたのだった。

 

ただし、今日の午後から技術長官と面談をして、許可が出るかどうかが決まるようだ。
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美来が用件を済ませて出ていくと、まひるはスマートリングはどうだったのか訊いてきた。

 

それに怜人は

「いや。ただの空リングだったよ」

と嘘を吐いた。

 

もし絵理沙の出した答えが本当だったとしたら、知った人間が危険にさらされるかも知れない。

それに、もし本当なら、誰が何のために?
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そこが一番気になるところだった。

 

 

怜人は、美来、朱音、翠と共に車に乗り込み、UW日本支部に向かった。

 

しばらく行くと、街の景色は一変し、ウイルスが蔓延る前と何ら変わらない、テクノロジーに溢れた都会的で綺麗な街並みに変わっていった。
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その辺りの地域はUW職員と、生き残ってコールドスリープについている男性の家族が住んでいる地区だった。

 

景色や人々の様子のあまりの違いに怜人は

「難民地区とはすごい違いだ」

と思わず漏らしていた。
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それに美来は

「資源には限りがありますから」

と、感情を交えずに答えた。

 

 

「そもそも、どうして難民地区はあんなに荒れ果ててしまったんですか?」

と、率直に疑問を投げかけた。

それには

「MKウイルスのせいです」

と、返ってきた。

 

ウイルスが蔓延し始めた当初、情報が錯綜して多くの男性がパニックに陥った。

 

やがて絶望した男性たちが暴徒と化し、彼らの死体は街中に放置されるようになっていった。
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だがウイルスの蔓延を少しでも防ぐため、放置された死体は特定の地域に集められて火葬され処理されたが、そうした場所は忌避されて廃墟に変わり始めていった。

 

そうして難民地区が形成されていったのだった。

 

そんなどうしようもないいきさつを聞くが、怜人は何も言うことができなかった。
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