見上げるように大きなビルが、UW日本支部の建物だった。
受付を済ませて技術長官室の前まで来たが、そこでいきなり怜人以外の3人は止められてしまう。
「お前たちはここまでだ」
「私は水原様の担当官で・・・」
と、美来が言おうとするが
「長官からのご指示だ」
と凄まれて、聞く耳を持ってもらえなかった。
自分より大きい女二人に挟まれ、威圧的に追い返された朱音は怒りを隠しきれなかった。
「ったく!役人ってのはいつでもどこでもムカつくねえ」
と、言いながらソファに勢いよく座り
「翠は怜人様のボディガードなのに!」
と、翠も対応の悪さに腹を立てていた。
一人通された怜人は、緊張した面持ちで長官室の扉を開けた。
「失礼します。み・・・水原です」
と挨拶すると、長官は彼の方に向き直らないまま
「後ろを見な」
と一言だけ発して、持っていたペンでその方向を指し示した。
彼が条件反射的にその方向を向いた瞬間、横に立っていたさっきの大きな女のうちの一人が、彼の首筋にスタンガンを当ててきた。
「バチッッ!!」
「・・・・・・っ」
彼は倒れながら意識を失う直前、こっちを向いた長官が笑っているのが分かった。
目が覚めると、どこかの一室で椅子に座らされているのが分かった。
最初に視界に入ったのは、自分の手首と足首が椅子に繋がれて拘束されている光景だった。
まだうまく身体に力が入らない。
それでも顔を前に向けると、見覚えのない女が近づいてきて喋り始めた。
「ふぅん・・・こいつがヘタレ肉バイブか」
と言いながら、彼の頬を掴んで無理矢理首を上向かせる。
女はさらに喋り続ける。
「お前、好きな女のためにメイティング拒んでるらしいじゃないか・・・
この状況でも、同じことが言ってられるかな?」
そういう女の背後から、首輪をつけて顔を上気させ、息を荒げた全裸の女たちが近づいてきていた。
全部で4人。
全員が全裸で、物欲しそうに怜人に視線を送っていた。
「誰も見てない・・・存分に盛るがいいさ。
さて、アンタにも元気になるお薬注射しとこうか・・・」
女は嬉しそうにそう言い、いやらしい笑みを零した。
考察・感想
言葉遣いが悪く、態度も悪く、生き残った男性を種馬としか見ていない技術長官の顔が初登場。
暴行・拉致・監禁の罪に問えると思うのだが、今の時代に警察機構がまともに機能しているとは考え辛いし、その通り、彼女は軽く注意される程度で済ませられる。
女しかいないとは言え、無法世界にならないのが不思議だ。
石動寧々子が火野のメイティングシーンを覗き見ていたことから考えて、怜人が部屋の中で何をしているかくらいは監視されていると思っても良さそうだ。
それが単に良からぬことを防止するためだけなのかどうなのかは、何とも言えない。
担当官によっても、知っている情報に違いがある可能性は否定できない。